『007/カジノ・ロワイヤル』(2006年)

2008 年 12 月 1 日

 007シリーズに出てくるお酒には意味が隠されている?…前回、スミノフの歴史を紐解きながら推測したことが、『007/カジノ・ロワイヤル』でさらに真実味を帯びてくる。

 

ゴードン・ジン 3、ウォッカ 1、キナ・リレ 1/2を、

シェイクしてシャンパン・グラスに注ぎ、レモンの皮を入れて

 

これはカードゲームの際に敵から毒をもられたボンドが、死の淵から戻って来るなり注文したマティーニ。それをくいっと飲み干し、完全復活を告げるボンド。しかしながらこのマティーニはジンとベルモットでつくる一般的なレシピとはかなり異なっている。

「日本ではマティーニは、ジンとベルモットに氷を入れてステアし、オリーブの実を添え、レモンで香りづけをするものがほとんどだと思います。一方ボンドが指定したレシピは、イギリス産ゴードンズのジン、ロシア産のウォッカを入れ、ベルモットルの代わりにフランスはボルドー産のキナ・リレが使われています。レモンはおそらく米国産でしょうか。ジンとウォッカは、ふつうなら一緒に使わないものです。わざわざ英・露・仏・米産の素材をカクテルさせるのは世界平和を願ってのことなのではないか、とエッセイストの東理夫氏が推測していましたね」。

と井口さんが教えてくれた。東氏は『グラスの縁から』という日本経済新聞でのエッセイ(2007.1.6夕刊)でこう推測しているのだそうだ。

「この映画が公開されてから、ボンドが指定したのと同じマティーニを、という注文をよく受けるのですが、残念ながら現在、全く同じものは作ることができません。キナ・リレが現在では日本に輸入されていないのです。キナ・リレとは白ワインをべースに薬草を漬け込んだもので、かすかにオレンジの香りがしますが、これの代用として同じリレ社で製造されているリレ・ブランを使えば似た味わいを出すことはできます」。

ただ、銀座ガスライトでさえ常にリレ・ブランがあるわけではないそうだ。この映画の影響なのか、世界中からリレ社への注文が殺到していて入手が難しくなっているらしい。

 ところで、これより前のシーンに話が戻るが、ターゲットを物色するためにモンテネグロのカジノにやってきたボンドは「マウントゲイのソーダ割り」を注文している。ここまで見てきたところによると、007シリーズで使われるカクテルには何らかの意味が込められているのでは?と推測できた。しかし、マウントゲイとは果たしてどんなお酒なのだろうか。

「マウントゲイは世界で最も古くから造られていると言われている、西インド諸島のバルバドス島産ラムです。バルバドスは英連邦王国の一国でリトル・イングランドと呼ばれるほど歴史的にイギリスとの関係が深いようです。このマウントゲイも現地人が作っているところをイギリス人によって発見され広まりました。現在ではラムはジャマイカ産のものが多いなかで、わざわざバルバドス島産を使っているのは、そのような背景も理由の一つかもしれません」。

 007はイギリスのスパイ。深読みすれば「英連邦王国のお酒を飲む」ことで祖国への忠誠を誓っているのかもしれない。ただ、そんな推測に対して井口さんは

「でも最近の映画は、タイアップしてるからという理由でラベルとかロゴをバンバン見せますからね」。

と笑ってみせた。それはそうだ。

それでもボンドが飲んだカクテルには何か意味がありそうだ、と思ってみたくなる。

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「シネマカクテル」監修:井口法之

銀座ガスライト店長。

2007年の第34回全国バーテンダーでは技能競技大会 総合優勝を果たす。 

好きな言葉は「最後にバーに行け」。

バーテンダーを夜の神父だと思って、悩みがあるときはバーの扉を押してほしい。

 銀座ガスライト

東京都中央区銀座8丁目7-11 ソワレド銀座第二弥生ビル6F 

 TEL:03-3574-7633

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 (構成・文 水木麻琴)

『007カジノ・ロワイヤル カジノ・ロワイヤル デラックス・コレクターズ・エ
ディション(2枚組、初回生産限定)』
¥4,179円(税込)  (株)ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

 

 

 

 

 

『ドクター・ノオ』(1962年)、『007は二度死ぬ』(1967年)

2008 年 10 月 12 日

8月は当シネマカクテル監修の井口さんから「海に似合うカクテル」として『007/ダイ・アナザー・デイ』にも登場していたモヒートを紹介していただいた。

さて007といえばやはりマティーニ。それも「ウォッカ・マティーニ。ステアせず、シェークで」というセリフとともに思い浮かべる方も多いだろう。ボンドが注文するこのマティーニは、ウォッカベースであることとシェークするという点で独特だ。

 「日本のバーで出される一般的なマティーニのレシピは、ジン3、ベルモット1をステアするものです。でもアメリカやヨーロッパではシェークの方が一般的みたいですね。私が向こうに行った時はどこに行ってもほとんどシェークされて出されました」。

 井口さん自身、一番好きなお酒がマティーニであるため、プライベートや旅先ではまずマティーニを注文するのだとか。それにしてもステアとシェークにはどんな違いがあるのだろう。

「シェークすると液体に空気が含まれる分、口当たりがまろやかになります。でも感じ方は人によって違うみたいですね。シェークするとキレがあるという方もいますし。作り方でいうと、よく混ぜたい時はシェーク、なじませる時はステアします」。

 ボンドは一口飲んだだけで「よくシェークされてるね」と見抜いてみせている。しかしながら常にシェークにこだわっているわけではない。

007は二度死ぬ』(1967)では日本に訪れたボンドが協力者からマティーニをふるまわれるのだが、「かきまぜただけだがよかったかね」と聞かれ「パーフェクト」と答える。『007/カジノ・ロワイヤル』(2006)では毒殺されかけた直後のボンドがマティーニを注文する際、「シェークしますか?ステアにしますか?」に対し「どっちでもいい」と答える。「それどころではない状況」であることが、観客に伝わってくる。

 さて、一般的にはジンとベルモットで作るマティーニをわざわざウォッカに指定しているのは何か理由がありそうだ。先の007は二度死ぬ』ではソ連(当時)大使館のドアマンからもらったウォッカ、『ドクター・ノオ』(1962)ではスミノフが使われている。007の原作者であるイアン・フレミングはロイター通信の支局長としてモスクワに赴任していたこともあり、ウォッカにこだわりを見せるのはその辺の事情もあるのかもしれないが、

「たとえばスミノフは、ロシア革命の時、亡命したウォッカ製造会社社長がパリでスミノフの製造を始め、アメリカに亡命した別のロシア人が、北米におけるスミノフの製造権を獲得したという背景があります。だからスミノフに関して言えば、単に世界ナンバーワンシェアを誇るウォッカというだけでなく、ロシア、フランス、アメリカをつなぐ歴史があります。このことが007で使われた理由の一つなのかも、と推測してみると楽しいですね」。

と井口さんがスミノフの歴史を紐解きながら語ってくれた。

次回『007/カジノ・ロワイヤル』を通して、このあたりを深く探ってみたい。

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「シネマカクテル」監修:井口法之

銀座ガスライト店長。

2007年の第34回全国バーテンダーでは技能競技大会 総合優勝を果たす。 

好きな言葉は「最後にバーに行け」。

バーテンダーを夜の神父だと思って、悩みがあるときはバーの扉を押してほしい。

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東京都中央区銀座8丁目7-11 ソワレド銀座第二弥生ビル6F 

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 (構成・文 水木麻琴)

 

『ドクター・ノオ』<アルティメット・エディション>
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「007ダイ・アナザー・デイ」

2008 年 8 月 7 日

ビーチパラソルの下、寄せては返す波を見つめる。片手には涼やかにカクテル

そんなシチュエーションに似合うカクテルは?と聞くと、井口さんは   「モヒート、でしょうか」と教えてくれた。

 「『007ダイ・アナザー・デイ』で、海からあがったばかりのハル・ベリーに、ピアース・ブロスナン扮するジェームズ・ボンドが勧めるカクテル、あれがモヒートです。」

 キューバに飛んだボンドがビーチのバーで「モヒート、ポルファボール(”モヒートをくれの意の現地語)と注文する。ロングのカクテルグラスにミントの葉と氷が揺れる。海に目をやると、オレンジ色のビキニを身につけた女性に目がとまる。海から陸にゆっくりあがってきた彼女に、ボンドは「モヒート うまいよ」といって手渡すのだ。

-強すぎた?

-時間があれば慣れるわ

-時間ある?

-夜明けまでなら。あなたは?

こんな会話、いつか交わしてみたいものだ。が、それほど強いカクテルだとすればこちらが先に倒れてしまう。

「日本ではクラッシュアイスを使い、ミントをつぶしてソーダでアップするのが一般的なレシピです。モヒートの本場であるキューバでも基本的には同じ原料・同じ作り方なのですが、日本の方が丁寧に作られるから繊細な味になり、キューバではラフに作られるからファーストのあたりでアルコールが強く感じられるのかもしれません。」

ただし銀座ガスライトのモヒートにはソーダが入らない。そのおかげで最後まで水っぽくならずに爽やかなミントの香りが続く。強い、とは感じない。辛すぎず、甘ったるくもないため飲み飽きない。

そういえば『007ゴールドフィンガー』に出てくるミント・ジュレップも、ミントの葉がグラスで揺らめいていて見た目はモヒートとよく似ているのだが、

「あれはバーポンがベースで、ケンタッキーが発祥の地です。ケンタッキーダービーの時やその前後のパーティでこれを飲むのが現地流です。だからどちらかというと海辺に合うカクテルというわけではないですね。」

たしかにあのシーンは、人質となったボンドが女性飛行士に連行されたケンタッキーでのシーンだった。なるほど、ボンドはスパイとして偵察に徹する時は郷に入っては郷に従えを肝に銘じているのかもしれない。一人だけ「ウォッカ・マティーニ」を注文したのでは浮きまくりで目立ってしまい、スパイ活動などできないからだ。但し、偵察ではなく確信を持って敵の陣地に乗り込む時は別。『007ダイ・アナザー・デイ』でもアイスランドの城に招かれた時はもう心を決めていて、堂々とマティーニを飲んでいる。

 さて、映画からは少し離れ、海辺に似合うカクテルをもう少し紹介していただいた。

「それならやっぱり、キューバのラムを使ったカクテルでしょうね。フロリダ半島やキューバなど海辺での生活をこよなく愛した文豪ヘミングウェイは、ダイキリとモヒートを特に好んで飲んだそうです。この2つはやはり海に似合うのではないでしょうか」。

「あと、スペインで流行しているレブヒートもいいでしょうね。シェリーベースで、セブンアップでわったカクテルです」。

 今年もやっぱり暑い夏。でもこれらのカクテルを手にすると、涼しい風が身体を通り抜けていくように感じられるのだ。

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「シネマカクテル」監修:井口法之

銀座ガスライト店長。

2007年の第34回全国バーテンダーでは技能競技大会 総合優勝を果たす。 

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                                     (取材・文 水木麻琴)

 

GOLDFINGER (C) 1964 United Artists Corporation and Danjaq, LLC. All Rights Reserved. 007 Gun Logo (C)1962-2006 Danjaq, LLC and United Artists Corporation. JAMES BOND, OO7, OO7
Gun Logo and all other 
James Bond related trademarks TM Danjaq, LLC. All Rights Reserved. Layout and Design (C) 2006
Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved. Distributed by Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. “Twentieth Century Fox,” “Fox” and their associated logos are the property of Twentieth Century Fox Film Corporation and are used under license.価格 ¥1,419(税込¥1,490)品番 MGBE-29250JANコード 498814256892                                  

DIE ANOTHER DAY (C) 2002 United Artists Corporation and Danjaq, LLC. All Rights Reserved. 007 Gun Logo(C) 1962-2006 Danjaq, LLC and United Artists Corporation. JAMES BOND, OO7, OO7 Gun Logo and all other James Bond related trademarks TM Danjaq, LLC. All Rights Reserved. Layout and Design (C) 2006 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved. Distributed by Twentieth Century Fox HomeEntertainment LLC. “Twentieth Century Fox,” “Fox” and their associated logos are the property of Twentieth Century Fox Film Corporation and are used under license.   価格 ¥1,419(税込¥1,490) 品番 MGBE-29262 JANコ-ド 4988142544322
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カクテル」

2008 年 7 月 19 日

「シネマカクテル」監修として映画とお酒の熱い関係をひも解いてくださっている井口法之さん。2007年の第34回全国バーテンダー技能競技大会で見事総合優勝を果たした彼の原点には1988年の映画『カクテル』がある。

「僕が中学の頃、『カクテル』と『レインマン』が二本立てで上映されていて見に行ったのですが、『カクテル』には目が釘付けになりました。

トム・クルーズが魅せるあの技がもう一回見たくて、後日また映画館に行きましたね」

 音楽に乗せてスピリッツの瓶を二本同時に頭上に回しあげ、後ろ手でキャッチし、ステップを踏みながらグラスに注ぐ。カウンターの中は華麗なショーのようだ。

 広いホールでトム・クルーズが高らかに即興の詩を朗読するシーンはこの映画の山場の一つだが、

         

      アメリカ人は飲んでいる 俺の作ったカクテル

      セックス・オン・ザ・ビーチ

      ピーチのシュナップス

      目の回るベルベット・ハンマー

      フルーツ・ジュースにピンクの泡を乗せて

      スイートでファンシーなアイスティー

      カミカゼ、オーガズム、デス・スパズム、Lの痙攣

      シンガポール・スリング

      アメリカ人はひざまずく 俺の作った酒に

 

「おそらく日本では、あの詩に出てくる単語がすぐにカクテルの名前だと気づいた人は少なかったでしょうね。あの当時、ほとんど知られていなかったカクテルだからです。日本語で出版されているカクテルブックのどこにも載っていなかったし。カミカゼと出てきてはじめて、これはカクテル名をあげているんだなと気づいたんじゃないかな」

 

 今ではこれらのカクテルはほとんどのバーテンダーが一度は(おそらくは何度も)注文を受けているほどポピュラーになったが、実際、当時のカクテルブックには掲載されていない。唯一掲載されているカミカゼのスタンダードなレシピをひとつご紹介しよう。

 

 ウォッカ 3/4

 ホワイトキュラソー 1tsp. ※tsp=ティースプーン。小さじ程度

 ライムジュース 1/4 tsp

 をシェーク。オールドファッションドグラスで供する。

 

カミカゼという名の由来は、ホワイトキュラソーの苦味とライムの酸味が切れ味鋭く、日本海軍の神風特攻隊の攻撃のようだと例えられたのだとか。

 

 

カミカゼはレシピが変化するカクテルとしても代表的ですが、たとえばコスモポリタンという、ロンドンの女性が作ったカクテルもレシピは幅広くあります。あと、日本で有名だけど海外では知られていないカクテルっていうのもたくさんあります。たとえばシャンハイも中国で有名ではないし、ブロードウェイサーストがブロードウェイの隣にある店にも置かれていないのには驚きでしたね」

 

それにしても瓶を回しながら1tsp.などという微量なスピリッツをグラスに注ぎ込む技は相当ハイレベル。ただ味はおろそかになりがちなのでは、といぶかってしまうが、そこはプロだ。

「例えばラスベガスで年一回開かれるフレアスタイルの世界大会で作られるカクテルは味も一級品なんですよ」とのこと。

 

「日本では静かに飲みたいお客様も多いからかフレアスタイルはあまり定着しないんですが、最近また少しずつ人気がでてきたみたいです。TGIフライデーズという、トム・クルーズに演技指導した会社の社長が経営する店が現在品川にあり、そこのショーは盛況みたいですよ」

 

 クールなたたずまいの井口さんも、その原点はフレアスタイルのバーテンダーへの憧れにあった。だからなのだろうか、カクテルを作る井口さんの一連の動きは流れるように美しい。

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「シネマカクテル」監修:井口法之

銀座ガスライト店長。

2007年の第34回全国バーテンダーでは技能競技大会 総合優勝を果たす。 

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 銀座ガスライト

東京都中央区銀座8丁目7-11 ソワレド銀座第二弥生ビル6F 

 TEL:03-3574-7633

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                                        (構成・文 水木麻琴) 

「カクテル」

DVD発売中

発売元:ウォルトディズニースタジオホームエンターテイメント                

 

「ハスラー2」

2008 年 6 月 27 日

エディ (ポール・ニューマン) がニセ酒を売っているという驚きの展開で始まるハスラー2
あれほどJ.T.S.ブラウンにこだわっていた若かりし頃とのギャップが、25年間という時間の長さを際立たせる。

「古い樽が寝てたんだ。フーゼル油も酸味も少ない」
フーゼル油はアルコール発酵の副産物として発生するのだが、特異臭があり好まない人が多い。エディの舌はどうやら確かなようだ。けれども心は腐ってしまったのだろうか。

「銘柄物と変わらない。ワイルド・ターキーに混ぜても、誰にもわからん」

 

通常バーボンは焦がした新樽に詰めて熟成させるが、Angel’s Share(天使の分け前)と呼ばれる年3%前後の蒸発分がある。
例えば10年熟成だとすると元々の量のおよそ30%が蒸発してしまうことになる計算だ。古くなればなるほど貴重だし、味わいも増していく。
つまりニセ酒といえどもエディの言うとおり銘柄物に劣らないのだろう。であれば「新しい銘柄として売り出し」てみることもできるのに、そこを「銘柄物に混ぜよう」と考えてしまうエディ。
25年間そうやって人をだまして生きてきたことを物語っている。

 

そこに登場するビンセント (トム・クルーズ) は能天気を絵に描いたようなお調子者の青年。ビリヤードが面白くてたまらないビンセントに目をつけたエディはうまくあやつって金を稼ごうとする。だが賞金稼ぎのツアーの途中、エディがつぶやくセリフがせつない。

 

「今の時代はヤクだ。俺のころは酒だった。酒は人間的だ」

 

いまだに酒に対して絶対的な信頼を寄せているエディ。

冒頭のシーンは、世の中をあきらめているような倦怠感の象徴だったのだ。

 

酒は薬にもなれば毒にもなる。快楽を追うばかりで破滅一直線のヤクとは違う。

ウィスキーはその昔は薬として利用されていたと言われており、語源は「生命の水(アイルランド語でウシュク・ベーハー  uisge beatha )という。

酒とは、信頼できる存在なのである。

 

さて、ビンセントとのツアーがきっかけで再びキューを手にしたエディ。古い友人が酒を頼む際エディのために「こいつはJ.S.T.だ」と言いここで初めてJ.T.Sがでてくるのだが、これを機にしたかのようにニセ酒人生に終止符を打つ。それまでは金のために生きてきたエディは、勝てる試合でも金のためなら実力など抑えるべきだと考えてきた。しかしここからは違う。

ビンセントとの勝負に八百長はいらない。

 

☆華麗な玉さばきを見せるポール・ニューマンに、負けず劣らぬトム・クルーズ。芸達者な俳優だと改めて思います。次回、『カクテル』で魅せるトム・クルーズのフレア スタイルもすごい。これを見てバーテンダーを目指した若者は少なくないのです。かくいうシネマ・カクテル監修の井口氏もその一人‥!

 

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「シネマカクテル」監修:井口法之


銀座ガスライト店長。

2007年の第34回全国バーテンダーでは技能競技大会 総合優勝を果たす。 

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(構成・文 水木麻琴)

 

 

「ハスラー2」
DVD発売中
キャスト: ポール・ニューマン、トム・クルーズ、メアリー・エリザベス・マストラントニオ
発売元:ウォルト ディズニー スタジオホーム エンターテイメント

「ハスラー」
~J.T.S.ブラウンをボトルごとあおるポール・ニューマン~

2008 年 5 月 22 日

どの酒を、どんなふうに飲むか。
そこには男の人生が色濃く映し出されてしまうものだ。

 

映画のタイトルともなっているハスラーとは、特にビリヤードなど玉突きの勝負師のことをさす。

その賭ゲームが佳境にさしかかった頃、名手ミネソタ・ファッツが「酒と氷を」と頼むのだが、

ポール・ニューマン扮するエディはこういう。

 JTS

「俺はバーボンのJ.T.Sだ。グラスはいらない」

 

そしてボトルごと直接、酒をあおる。

 

対するファッツはグラスに氷を入れて酒を飲み、

さらに状勢が不利になると顔を洗って爪を切り、

身なりをパリっとさせて再び臨むのだ。

そこには、冷静な勝負師である本物のハスラーと、

運と才能に溺れている未完の青二才との違いが見事に表現されている。

酒の飲み方に人格が現れるという絶妙な演出。

 

一方、ハスラーの胴元であるゴードンは「仕事中はミルク」と決めている。

彼の仕事場は賭場であり、紫煙とアルコールで充満しているというのに、

そこをミルクで通すのだからすごい。

裏社会で成功した人間は徹底している。

 

ゴードンはエディに言うのだ。

「酔わないのも才能だ」と。

 

後にこの二人がルイビルに賭ゲームの旅に出るのだが、エディは酒を飲まない。

ルイビルは実はバーボンのメッカでもある街なのに、

意地でも張っているかのように一滴も飲まず負けゲームを続ける。

エディはこの時点ではまだ酒とゴードンの言葉に囚われていて、自分を見失っている。

映画を「酒」という観点で観ると時におもしろい発見がある。

 

ところで、エディが好んで飲むJ.T.S.ブラウンは、樽香があり一癖ある個性的なバーボンだ。

そのJ.T.Sのうちでもエディが飲んでいるのは10年ものではなく6年ものだという説がある。

貧しいエディは身の丈に合う6年ものを選んでいた。

ただエディの持つあのスキットル型のボトルは日本に輸入されていないため、

日本ではあのタイプのJ.T.Sは飲めないのが残念だ。

 

ブッカーズ  一方でファッツが飲む酒はラベルが見えず何を飲んでいるのか

   はっきりとは分からない。

  そこでファッツに似合う酒は何だろうかと考えてみた。

  度数も強いが正統派のバーボンとも言われている「ブッカーズ」と

  イメージが重なるように思ったのだがどうだろう。

 

 

 

 

 

☆第二回、第三回では、

ポール・ニューマンとトム・クルーズが競演した『ハスラー2』、

そして「シネマ・カクテル」アドバイザーの井口法之氏がこの道を

目指すきっかけとなったトム・クルーズ主演『カクテル』を

ご紹介していきます。

 

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「シネマカクテル」アドバイザー:井口法之SYNDICATE

銀座ガスライト店長。

2007年の第34回全国バーテンダーでは技能競技大会 総合優勝を果たす。 

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銀座ガスライト

東京都中央区銀座8丁目7-11 ソワレド銀座第二弥生ビル6F 

TEL:03-3574-7633

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   (構成・文:水木麻琴)

「ハスラー」

Sell DVD価格:¥1,419(税込¥1,490) 

品番:FXBNT-1006 

JANコード:J988142582423 

キャスト:ポール・ニューマン、ジャッキー・グリーソン、ジョージ・C・スコット

(C)2007 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved. 

 

 

シネマカクテル

2008 年 4 月 21 日

映画好きバンテンダーとコラボ連載
映画の中に出てくるお酒、料理にまつわるおいしいコラムから特別レシピまで、アップしていきます。
第1回目は5月23日(金)アップ予定。