『007/カジノ・ロワイヤル』(2006年)
007シリーズに出てくるお酒には意味が隠されている?…前回、スミノフの歴史を紐解きながら推測したことが、『007/カジノ・ロワイヤル』でさらに真実味を帯びてくる。
ゴードン・ジン 3、ウォッカ 1、キナ・リレ 1/2を、
シェイクしてシャンパン・グラスに注ぎ、レモンの皮を入れて
これはカードゲームの際に敵から毒をもられたボンドが、死の淵から戻って来るなり注文したマティーニ。それをくいっと飲み干し、完全復活を告げるボンド。しかしながらこのマティーニはジンとベルモットでつくる一般的なレシピとはかなり異なっている。
「日本ではマティーニは、ジンとベルモットに氷を入れてステアし、オリーブの実を添え、レモンで香りづけをするものがほとんどだと思います。一方ボンドが指定したレシピは、イギリス産ゴードンズのジン、ロシア産のウォッカを入れ、ベルモットルの代わりにフランスはボルドー産のキナ・リレが使われています。レモンはおそらく米国産でしょうか。ジンとウォッカは、ふつうなら一緒に使わないものです。わざわざ英・露・仏・米産の素材をカクテルさせるのは”世界平和を願って”のことなのではないか、とエッセイストの東理夫氏が推測していましたね」。
と井口さんが教えてくれた。東氏は『グラスの縁から』という日本経済新聞でのエッセイ(2007.1.6夕刊)でこう推測しているのだそうだ。
「この映画が公開されてから、ボンドが指定したのと同じマティーニを、という注文をよく受けるのですが、残念ながら現在、全く同じものは作ることができません。キナ・リレが現在では日本に輸入されていないのです。キナ・リレとは白ワインをべースに薬草を漬け込んだもので、かすかにオレンジの香りがしますが、これの代用として同じリレ社で製造されているリレ・ブランを使えば似た味わいを出すことはできます」。
ただ、銀座ガスライトでさえ常にリレ・ブランがあるわけではないそうだ。この映画の影響なのか、世界中からリレ社への注文が殺到していて入手が難しくなっているらしい。
ところで、これより前のシーンに話が戻るが、ターゲットを物色するためにモンテネグロのカジノにやってきたボンドは「マウントゲイのソーダ割り」を注文している。ここまで見てきたところによると、007シリーズで使われるカクテルには何らかの意味が込められているのでは?と推測できた。しかし、マウントゲイとは果たしてどんなお酒なのだろうか。
「マウントゲイは世界で最も古くから造られていると言われている、西インド諸島のバルバドス島産ラムです。バルバドスは英連邦王国の一国で”リトル・イングランド”と呼ばれるほど歴史的にイギリスとの関係が深いようです。このマウントゲイも現地人が作っているところをイギリス人によって発見され広まりました。現在ではラムはジャマイカ産のものが多いなかで、わざわざバルバドス島産を使っているのは、そのような背景も理由の一つかもしれません」。
007はイギリスのスパイ。深読みすれば「英連邦王国のお酒を飲む」ことで祖国への忠誠を誓っているのかもしれない。ただ、そんな推測に対して井口さんは
「でも最近の映画は、タイアップしてるからという理由でラベルとかロゴをバンバン見せますからね」。
と笑ってみせた。それはそうだ。
それでもボンドが飲んだカクテルには何か意味がありそうだ、と思ってみたくなる。
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「シネマカクテル」監修:井口法之
銀座ガスライト店長。
2007年の第34回全国バーテンダーでは技能競技大会 総合優勝を果たす。
好きな言葉は「最後にバーに行け」。
バーテンダーを夜の神父だと思って、悩みがあるときはバーの扉を押してほしい。
銀座ガスライト
東京都中央区銀座8丁目7-11 ソワレド銀座第二弥生ビル6F
TEL:03-3574-7633
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(構成・文 水木麻琴)
『007カジノ・ロワイヤル カジノ・ロワイヤル デラックス・コレクターズ・エ
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¥4,179円(税込) (株)ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント


















