『ドクター・ノオ』(1962年)、『007は二度死ぬ』(1967年)
8月は当シネマカクテル監修の井口さんから「海に似合うカクテル」として『007/ダイ・アナザー・デイ』にも登場していたモヒートを紹介していただいた。
さて007といえばやはりマティーニ。それも「ウォッカ・マティーニ。ステアせず、シェークで」というセリフとともに思い浮かべる方も多いだろう。ボンドが注文するこのマティーニは、ウォッカベースであることとシェークするという点で独特だ。
「日本のバーで出される一般的なマティーニのレシピは、ジン3、ベルモット1をステアするものです。でもアメリカやヨーロッパではシェークの方が一般的みたいですね。私が向こうに行った時はどこに行ってもほとんどシェークされて出されました」。
井口さん自身、一番好きなお酒がマティーニであるため、プライベートや旅先ではまずマティーニを注文するのだとか。それにしてもステアとシェークにはどんな違いがあるのだろう。
「シェークすると液体に空気が含まれる分、口当たりがまろやかになります。でも感じ方は人によって違うみたいですね。シェークするとキレがあるという方もいますし。作り方でいうと、よく混ぜたい時はシェーク、なじませる時はステアします」。
ボンドは一口飲んだだけで「よくシェークされてるね」と見抜いてみせている。しかしながら常にシェークにこだわっているわけではない。
『007は二度死ぬ』(1967年)では日本に訪れたボンドが協力者からマティーニをふるまわれるのだが、「かきまぜただけだがよかったかね」と聞かれ「パーフェクト」と答える。『007/カジノ・ロワイヤル』(2006年)では毒殺されかけた直後のボンドがマティーニを注文する際、「シェークしますか?ステアにしますか?」に対し「どっちでもいい」と答える。「それどころではない状況」であることが、観客に伝わってくる。
さて、一般的にはジンとベルモットで作るマティーニをわざわざウォッカに指定しているのは何か理由がありそうだ。先の『007は二度死ぬ』ではソ連(当時)大使館のドアマンからもらったウォッカ、『ドクター・ノオ』(1962年)ではスミノフが使われている。007の原作者であるイアン・フレミングはロイター通信の支局長としてモスクワに赴任していたこともあり、ウォッカにこだわりを見せるのはその辺の事情もあるのかもしれないが、
「たとえばスミノフは、ロシア革命の時、亡命したウォッカ製造会社社長がパリでスミノフの製造を始め、アメリカに亡命した別のロシア人が、北米におけるスミノフの製造権を獲得したという背景があります。だからスミノフに関して言えば、単に世界ナンバーワンシェアを誇るウォッカというだけでなく、ロシア、フランス、アメリカをつなぐ歴史があります。このことが007で使われた理由の一つなのかも、と推測してみると楽しいですね」。
と井口さんがスミノフの歴史を紐解きながら語ってくれた。
次回『007/カジノ・ロワイヤル』を通して、このあたりを深く探ってみたい。
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「シネマカクテル」監修:井口法之
銀座ガスライト店長。
2007年の第34回全国バーテンダーでは技能競技大会 総合優勝を果たす。
好きな言葉は「最後にバーに行け」。
バーテンダーを夜の神父だと思って、悩みがあるときはバーの扉を押してほしい。
銀座ガスライト
東京都中央区銀座8丁目7-11 ソワレド銀座第二弥生ビル6F
TEL:03-3574-7633
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(構成・文 水木麻琴)
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